電子回路の組立には、まず部品配置と固定、電源(プラス)とグラウンド(マイナス)の配線、信号線の配線、基板外の配線、ケース加工などがあります。それぞれの段階について、一般論として説明します。

『基板加工』

 基板の大きさや形を変えるときや穴をあけるときは部品をハンダ付けする前にします。部品を付けてから加工するのは非常に困難で、基板が割れたり、ケガをしやすくなります。基板を切るにはカッターで両面から厚みの1/3程度までPカッターなどで傷を入れ、残りの1/3を机の端や万力などを利用して折ります。あるいは、金のこや糸のこなどで切り、電気ドリルやボール盤などで穴をあけます。必ず保護メガネをして、ケガに注意して加工してください。

基板を切る

 先に説明したようにPカッターで両面に厚みの1/3程度の傷を付け、折ります。あるいは、金のこや糸のこで切ったり、サーキュラーや電動糸鋸を使って切ります。

穴をあける

 電気ドリルやボール盤にドリルの刃を付け、穴をあけたい中心にセンターポンチ(写真25)を使ってくぼみを付けたところに垂直に穴をあけます。電気ドリルやボール盤は強力で非常に危険なので、怖ければ、写真26のような充電式の電動ドリルや模型工作用の電動ドリルを使うと良いでしょう。

『部品配置と固定』

 部品配置の基本は、高電圧と低電圧の部分、高周波と低周波の部分、デジタルとアナログの部分など扱う信号の種類やレベルが違う部分を離すことと、配線ができるだけ短くなるように信号の流れに応じた配置にすることです。ICなどは回転させる(向きを変える)ことにより、配線を短く交差しないようにしたりできる場合がありますが、出来るだけ向きを揃えないと、製作のときに配線を間違えたり、チェックや修理がしにくくなったりしますので、できるだけICは同じ向きに揃えましょう。基本的にICは型番が読める向きに付けるのが鉄則です。また、できるだけ直接ハンダ付けせずにICソケットをハンダ付けして配線し、電源や信号の配線のチェックが終わってからICを差し込むようにすることで、高価なICがはんだごての熱や誤配線や静電気などで壊れるのを防ぎ、故障のときの修理を楽にします。

部品の固定

 部品は高さの低いものから付けるのが、裏返してハンダ付けするときに楽です。高さの高い部品を先に付けてしまうと、裏返してハンダ付けするときに支えがなくなって浮いてしまいます。また、ICやコネクタなどのピン数の多い部品は対角の2本だけをハンダ付けして固定し、向きが間違っていたり浮いていたりしないか、足が折れていないかを確認してから付けないと、後から取るのは非常に困難です。ICソケットを使うときにはICソケットの対角の2本だけを固定して、抵抗などの部品を付けるところはハンダ付けせずに、抵抗などの足を曲げて、ICソケットの足の近くで切ってからハンダ付けすると楽できれいに仕上がります。

グラウンド(電源のマイナス)の配線

 電子回路のグラウンドは最優先で配線します。なぜならば、グラウンドが不安定だと回路が正常に動作しなかったり、ノイズが増えたりするからです。グラウンドの配線が悪いのは整地していない荒地でサッカーやゴルフをするようなもので、時々挙動が変になったり、ボールを見失ったりします。電子回路に言い換えれば、携帯電話のメールが勝手に消えたり、勝手に電源が切れたり、通話が切れたり、メールがなかなか送れなかったり、雑音が増えたり、テレビの画面が揺れたり大きくなったり小さくなったりします。

 グラウンドの配線は、普通はスズめっき線でグラウンド(GND)以外のピンに接触しないように配線します。また、できるだけ短距離で、できるだけ太く配線します。ループを作ると、ノイズの影響を受けやすくなったり、誤動作の原因になりますので、基本的にくし形に配線します。

電源(プラス)の配線

 電源のプラスの配線は電圧ごとに分離し、グラウンドと交差しないようにスズめっき線を使って配線します。どうしても交差する場所は、太目(0.8mm)程度の単線ビニール線か、ない場合は普通のビニール線を使ってジャンプします。普通のビニール線はグラウンドの配線の上で交差して溶けるとショートしますし、他の配線と見分けやすくするために、できれば赤の耐熱ビニール線を使うと良いでしょう。電圧の違う電源がある場合は、赤以外のビニール線で配線する必要があります。また、グラウンドと区別しやすくするために、あえてグラウンドより細めのスズめっき線を使うとチェックが楽です。

耐熱ビニール線の例(耐熱電子ワイヤー)

信号線の配線(電源とグラウンド以外)

 基本的にラッピング線を使います。配線はできるだけ短く、できるだけ部品の足の上を通らないように、どうしても部品の上を通ってしまうときは、どけられる程度に余裕を持たせて長めに配線します。配線は、まずラッピング線をワイヤーストリッパで2mmほど被覆をむき、付ける前にハンダで被覆をむいた所を覆っておき(予備ハンダあるいははんだめっきといいます)、それを部品の足にハンダ付けし、長さを測って切り、反対側の被覆をむいて予備ハンダして、ハンダ付けして1本分の配線が完了します。基板の外に出る配線は、できるだけコネクタを経由させます。

ジュンフロン線の写真
ジュンフロン線
コネクタの例(日本圧着端子製造JST-XHコネクタ)